すすきのエリアを代表する高級居酒屋の実力

勝龍庵 肴家 くのりは、2020年8月の移転リニューアルを経て、すすきのエリアにおける高級居酒屋の新たなスタンダードを確立した。雑居ビル6階という隠れ家的な立地にもかかわらず、著名人を含む多くの美食家が足繁く通う理由は、単に料理の質が高いだけでなく、総合的な食体験の完成度にある。

全国各地から厳選された食材への徹底したこだわり

最大の特徴は「北海道では珍しい全国各地の旬魚」を堪能できる点だ。札幌市場の極上品に加え、豊洲市場から直送される鮮魚の品質管理は徹底しており、その日の最高の状態のものだけを提供。特に看板メニューであるお造り盛り合わせは、仕入れによって内容が日々変わる一期一会の逸品として、リピーターからも飽きられることがない。

料理人の技術力が光る繊細な調理

九里オーナーの料理は「繊細」と「精緻」という言葉がぴったり当てはまる。かすべの煮こごり、あん肝の醤油煮といった伝統的な和食の技法を要する料理から、比内地鶏のセリスープ煮のような創作料理まで、どれも素材の良さを最大限に引き出す絶妙な調理が施されている。オープンキッチンカウンターでは、その調理過程を間近で見ることができ、視覚的な楽しさも提供している点が高評価につながっている。

深夜営業がもたらす独自の価値

翌1時まで（以前は翌5時まで）の営業は、すすきのエリアにおいて重要な差別化要因となっている。特に21時以降限定のおつまみコース（11,000円）の存在は、遅い時間からでも本格的な和食を楽しみたいという需要に的確に応えている。深夜でも品質を落とさない料理とサービスは、「札幌でも数少ない」という評価を得ており、二次会・三次会需要の取り込みに成功している。

価格設定の妥当性と価値提供

平均予算15,000～19,999円という価格帯は決して安くはないが、使用食材の質、調理技術の高さ、サービスの質を総合的に評価すると「妥当な価格設定」という結論に達する。特に6,600円から提供されるコース料理は、7～8品という充実した内容で、特別な日の会食や接待での利用価値が高い。お通し代550円という設定も、高級店としては良心的だ。

空間設計がもたらす特別な食体験

2020年の移転を機に一新された内装は、和モダンな雰囲気で統一され、落ち着いた大人の空間を演出。L字型のカウンター8席とテーブル8席という小規模な構成は、予約中心の営業スタイルと相まって、ゆったりとした時間を過ごせる環境を実現。個室はないものの、席間を広く取ることでプライバシーに配慮している点も評価が高い。

ブランド肉の取り扱いによる差別化

魚介だけでなく、秋田県直送の比内地鶏や岩手県の白金豚など、全国のブランド肉を日替わりで取り扱う点も大きな魅力。特に比内地鶏料理は複数の調理法で提供され、その品質の高さから固定ファンも多い。魚介と肉料理の両方で高いレベルを維持していることが、幅広い客層の支持につながっている。

季節感を大切にしたメニュー構成

春の根曲がり竹、桜鱒、冬のかすべなど、季節ごとの旬の食材を積極的に取り入れたメニュー構成は、リピーターを飽きさせない工夫として機能。「訪れるたびに新しい発見がある」という声が多いのも、この季節感へのこだわりが要因となっている。

著名人も認める実力

ホリエモン（堀江貴文氏）をはじめとする著名人が御用達にしているという事実は、店の実力を裏付ける重要な要素だ。「美食家も数多く集う名店」という評価は、単なる宣伝文句ではなく、実際の顧客層を反映したものであり、それが新規客の信頼獲得にもつながっている。

改善の余地と今後の展望

改善点として挙げられるのは、個室がないため完全なプライベート空間を求める客には不向きな点、価格帯が高めで日常使いには向かない点などがある。しかし、これらは店のコンセプトと密接に関わる要素であり、むしろ現在のポジショニングを明確にする要因として機能している側面もある。

総合評価：札幌の食文化を牽引する一軒

勝龍庵 肴家 くのりは、単に美味しい料理を提供するだけでなく、食材へのこだわり、調理技術の高さ、空間の快適性、サービスの質、立地の利便性という5つの要素を高いレベルでバランスさせることに成功している。札幌すすきのエリアにおいて、本物の味を求める美食家から、特別な日の会食を計画する人まで、幅広いニーズに応える実力を持つ名店として、今後も札幌の食文化を牽引していく存在であり続けるだろう。予約は必須だが、その価値は十分にある一軒だ。