店主の経歴と技術力

小伊勢健太氏は小樽の名店「伊勢鮨」の親戚という寿司界のサラブレッドでありながら、東京の「すし善」「鮨処 有馬」「すし てんちじん」などで修業を積んだ本格派職人。3歳からカウンターで寿司を食べてきたという生い立ちから、寿司に対する深い愛情と探究心を持った稀有な存在として業界内でも高い評価を得ている。専門家からは「寿司のことばかり考えている指折りの職人」と評され、その技術力と情熱は他店との明確な差別化要因となっている。

独創的なシャリと食材選定

当店最大の特徴は、3種の赤酢をブレンドした独自のシャリにある。特に九重雜賀という全国でも数少ない自社酒粕で赤酢を仕込む醸造蔵の製品を使用し、北海道食材に合わせて柔らかな酸味に調整している点は技術的に高度。硬めの食感を好む客層にも対応しており、シャリだけでも他店との明確な差別化を実現している。食材は北海道産に絞り込み、個性的な北海道の魚と独自性のシャリが合わさることで唯一無二の世界観を構築している。

営業システムと価格設定の秀逸さ

完全予約制・2部制（17:30〜、20:00〜）で最大12名限定という営業スタイルは、品質維持と顧客満足度向上の両立を図った秀逸な戦略。おまかせコース18,000円という価格設定は、内容のボリューム感と品質を考慮すると費用対満足度が非常に高いと専門家からも評価されている。価格を抑えめに設定することで幅広い層にアクセス可能にし、地元客に愛される店作りを実現している。

国際的評価と業界認知度

開店から約3年という短期間でフランスのゴ・エ・ミヨに掲載されるという快挙は、料理の品質が国際基準で評価されている証拠。札幌という全国トップクラスの鮨激戦区において、他店にはない魅力を確立したとして業界内でも注目を集めている。1級フードアナリストからも絶賛を受けており、その評価は信頼性が高い。

特別企画とサービスの多様性

月1回開催される「みっちゃんランチ」は、元銀座寿司太一の女性握り手による特別企画として話題性も高く、定期的な新しい魅力を創出している点で優秀。日本酒6〜7種類を600円〜という良心的価格で提供し、ワイン持ち込み料2,000円というサービスも地元客への配慮が感じられる。完全個室制ではないものの、L字カウンター8席という intimate な空間作りにより、様々なシーンに対応可能な柔軟性を実現している。

立地とアクセスの戦略性

すすきの駅から徒歩5分、第11グリーンビル4階という立地は、札幌の中心部からアクセス良好でありながら、ビル上層階により外部の喧騒から隔離された静謐な環境を実現。「フロアに降り立った瞬間から気品がある」と評される空間作りは、高級店としてのブランディングに成功している証拠だ。

総合評価と今後の展望

鮨 こいせは、伝統的な江戸前技術と北海道の豊富な食材を融合させ、独自の世界観を構築した現代的な高級鮨店として、札幌における新たなスタンダードを示している。職人の技術力、独創的なシャリ、適正な価格設定、快適な環境、そして国際的な評価という5つの強みを活かし、今後も成長が期待される注目店といえる。完全予約制という制約はあるものの、その分質の高いサービスと特別感のある体験を提供しており、特別な機会に利用する価値のある一店として推奨できる。