ホテル併設中華レストランの強み

チャイニーズキッチン龍鶴は、函館市のホテルテトラ本館1階に位置する中華料理店として、ホテル宿泊客と地元客の両方から支持を獲得している稀有な存在だ。2020年2月に2階から1階へと移転リニューアルを果たし、アクセス性が向上。市電五稜郭公園前駅から徒歩5分という立地は、観光客にとっても地元住民にとっても利用しやすく、「損保ジャパンビルを右折して左手」という分かりやすい目印が初訪問客の迷いを最小限に抑えている。

時間無制限バイキングという差別化戦略

最大の特徴は営業時間内であれば時間無制限というランチバイキングの設定だ。大人1,500円、小学生800円、未就学児無料という価格設定で、中華メインの和洋中40〜45種類の料理を提供。ドリンクバー、アイスクリーム、デザートまで含まれており、「ゆっくりご家族・ご友人とお食事できる」というコンセプトが明確に実現されている。この時間無制限システムは、特に子連れファミリー層から「子供のペースに合わせられる」と高評価を獲得しており、未就学児無料という料金体系と相まって、ファミリー層の心を掴んでいる。

BOX席という空間設計の妙

全60席すべてがBOX席という座席配置は、中華レストランとしては珍しい試みだ。2名掛け、4名掛け、6名掛けと様々なサイズのBOX席を用意することで、「いかにも中華料理店というより、落ち着いた昔ながらのカフェという感じ」という評価を生んでいる。この空間設計により、一人客から家族連れ、グループ客まで、あらゆる客層が周囲を気にせず食事を楽しめる環境が整っており、「個室でランチバイキング」という贅沢な体験が実現されているのは注目に値する。

料理の質とバイキングの両立

バイキング形式でありながら、単品メニューも充実しているのが龍鶴の特徴だ。「ご飯とカニの身が同じ割合かと思うほどたっぷり入った」カニチャーハン、「練りゴマを使用し、からしに鷹の爪を入れピリッと辛い」オリジナル担々麺、「魚介・肉・野菜など10種類ほどの食材が入った具沢山」五目焼きそばなど、単品メニューにも力を入れており、「エビチャーハンは少しオイリーだが味は思いの外美味しい」という評価が示すように、バイキングだけでなくアラカルトでの利用価値も高い。全67品の料理メニューを擁し、ディナータイムには宴会・接待向けのコース料理も提供している点は、多様なニーズへの対応力を物語っている。

ホテル連携による付加価値創出

ホテルテトラとの連携により、宿泊者限定で18:00〜20:30に函館塩ラーメンまたは函館カレーを無料提供するサービスは、宿泊パッケージの価値を大きく高めている。「宿泊すると、17:00から函館塩ラーメン券とサワー1時間飲み放題券ほか朝食は中華粥」という特典は、ホテル予約の決め手になり得る要素だ。さらに、4月下旬から9月下旬まで屋上で営業されるビアガーデンは「北海道1早い」として知られ、「ジンギスカン食べ飲み放題2時間4,400円」「サッポロ樽生クラシック」という北海道らしさ全開の企画が、夏季の集客に大きく貢献している。

人気の代償としての混雑問題

しかし、人気店ゆえの課題も存在する。「いつ行っても混んで並んで順番待ち」という声が複数上がっており、特にランチタイムの混雑は顕著だ。火曜日がランチ定休日（ディナーは営業）という設定も、週末と月曜日への客の集中を招いている可能性がある。また、「提供に時間がかかる」という指摘もあり、アラカルトメニューを注文する際には待ち時間を覚悟する必要がありそうだ。とはいえ、「美味しいので仕方ない」という寛容な評価が多いことから、料理の質が待ち時間を補って余りあることは確かだ。

価格設定とコストパフォーマンス評価

ランチバイキング大人1,500円という価格は、函館市内の同業態と比較して標準的だが、時間無制限・40〜45種類・ドリンクバー付きという内容を考慮すればコストパフォーマンスは極めて高いと評価できる。特に未就学児無料という設定は、子育て世代の財布に優しく、リピート率向上に寄与している。ディナータイムの予算が1,000〜1,999円というのも手頃で、「大人や子供にも大人気」な函館カレーを宿泊者特典として提供する戦略も、顧客満足度向上に一役買っている。2025年3月末までの初回限定100円割引クーポンも、新規顧客の獲得施策として機能していることは間違いない。

客層の多様性と店舗の包容力

興味深いのは、「一人で来ている人も結構見かける」という観察だ。ファミリー向けのバイキング店でありながら、BOX席の設計により一人客も居心地よく過ごせる空間が実現されている。これは、「落ち着いた昔ながらのカフェという感じ」という雰囲気作りが成功している証左だろう。女子会、家族連れ、ビジネス利用、一人食事と、あらゆるシーンに対応できる懐の深さこそが、龍鶴の真骨頂といえる。

総合評価：地域密着型ホテルレストランの理想形

チャイニーズキッチン龍鶴は、ホテル併設という立地を最大限活かしつつ、地域に根ざした中華レストランとして独自のポジションを確立している。時間無制限バイキング、BOX席による個室感覚、ホテル宿泊客への特典、夏季のビアガーデン営業という多角的なアプローチにより、観光客と地元客の両方から支持を獲得。混雑という人気の証を抱えながらも、「美味しいので仕方ない」と言わしめる料理の質が、リピーターを生み続けている。食べログ評価3.1点という数字以上の価値を提供している店舗といえよう。