札幌発・魚串という新ジャンルの開拓者

2017年11月3日のオープン以来、「魚串（うおくし）」という独創的なコンセプトで札幌の飲食シーンに新風を吹き込んだ「元祖北海魚串 がりや」。魚介類を焼き鳥のように串に刺して炭火で焼き上げるというシンプルながら革新的なアイデアは、瞬く間に話題を呼び、今では札幌の新たな名物として定着しつつある。その成功の秘訣は、北海道の豊富な海の幸を最大限に活かしながら、手軽に楽しめる串焼きスタイルに昇華させた点にある。

備長炭による本格調理と素材へのこだわり

調理法において特筆すべきは、備長炭を使用した本格的な炭火焼きという点だ。店内で新鮮な魚介を丁寧に捌き、一本一本手作業で串打ちを行い、備長炭の強い火力で一気に焼き上げる。この工程により、外はカリッと香ばしく、中はジューシーに仕上がる。多くの来店客が「焼き物の匂いがほとんどしない」と評価しているのは、備長炭の煙が少ない特性と、適切な換気システムの賜物といえる。

価格設定の絶妙なバランス

魚串の価格は1本250円から300円程度に設定されており、これは「女子受けしそうなサイズ感」という評価通り、量と価格のバランスが絶妙だ。少しずつ色々な種類を楽しみたいというニーズに応えつつ、複数本注文しても財布に優しい価格帯を実現。サッポロクラシックの中ジョッキが390円という破格の設定も、リピーターを増やす要因となっている。ただし、単品を複数注文すると一人6,000〜7,000円になることもあるため、コース料理の方がコストパフォーマンスは高い。

立地の優位性と店舗設計の妙

すすきの駅から徒歩わずか2分、狸小路駅から104mという抜群の立地は、仕事帰りのサラリーマンから観光客まで幅広い客層の獲得に成功。もりにビルの3階という一見分かりにくい立地ながら、ビル入口の立て看板やガラス面のメニュー掲示により、初訪問客でも迷わずアクセスできる配慮がなされている。

多様な席タイプによる柔軟な対応力

全40席の店内は、掘りごたつ席（最大20名）、テーブル席（最大12名）、カウンター席という3つのタイプを用意。特にカウンター席は「お一人様でも気負いしない寛ぎ感がある」と評され、一人飲みの需要にも応えている。一方で「カウンター席がメインフロアから離れており、隔離された感がある」という指摘もあるが、これはむしろプライベート感を求める客には好都合ともいえる。

スタッフの質とサービスレベル

複数のレビューで共通して高評価を得ているのがスタッフの接客品質だ。「笑顔が眩しく感じの良いステキなスタッフ」「女性スタッフの接客がしっかりしている」といった声が多く、特に初めて魚串を体験する客への丁寧な説明や、おすすめの提案が好評。サッポロクラシックの泡のクリーミーさが保たれているのも、サーバーメンテナンスへの細やかな配慮の表れだ。

独自メニューによる差別化戦略

「がり」を店名に冠し、「がりサワー」や「がりやのがり（308円）」といったオリジナルメニューを開発。特に自家製の「しめ鯖とがり」は「一度食べたら病みつきになる」と評判で、リピーターを生み出す看板商品となっている。また、魚串だけでなく、新鮮な刺身や海鮮茶漬け、北海道名物のザンギなど、海鮮居酒屋としての基本メニューも充実させることで、幅広いニーズに対応。

宴会需要への積極的な対応

2名から40名まで対応可能な宴会プランを用意し、25名以上での貸切にも対応。「お客様人数×500円引き」という分かりやすいクーポン設定や、営業時間外の宴会対応など、団体客獲得への積極的な姿勢が見られる。コース料金も4,500円（通常5,000円）からと手頃で、120分の飲み放題付きという充実した内容が支持を集めている。

SNS活用と情報発信

Instagram（@gariya_1103）を中心としたSNS運用により、臨時休業や営業時間の変更を随時発信。1,460人のフォロワーと2,393件の投稿という実績は、地道な情報発信の積み重ねを示している。FacebookやTwitterも併用し、多角的な顧客接点を構築。特に若い世代への訴求に成功している点は、今後の成長可能性を示唆している。

2号店展開による事業拡大

2023年11月には「魚串とおばんざい がりや」という2号店をオープン。こちらは魚串に加えて「おばんざい」という新要素を追加し、より家庭的な雰囲気を演出。本店とは異なるコンセプトで差別化を図りながら、「がりや」ブランドの浸透を図る戦略は、経営の安定性と将来性を示している。

改善の余地と今後の課題

全席喫煙可能という点は、愛煙家には歓迎される一方で、20歳未満の入店ができないという制約を生んでいる。家族連れや健康志向の強い層を取り込むためには、分煙化や禁煙席の設置が今後の課題となるだろう。また、火曜定休に加えて不定休があることから、SNSでの情報確認が必須となっている点も、一部の客にとってはハードルとなる可能性がある。

総括：新ジャンル確立への道筋

「元祖北海魚串 がりや」は、魚串という新ジャンルを開拓し、札幌の食文化に新たな選択肢を提供することに成功した。備長炭による本格調理、リーズナブルな価格設定、質の高い接客サービス、そして独創的なメニュー開発により、開店から7年以上経った今でも安定した人気を保っている。今後は全国展開も視野に入れながら、札幌発の新たな食文化として「魚串」を根付かせていく可能性を秘めている。その先駆者としての役割を果たし続けることが、この店に課せられた使命といえるだろう。