施設の特徴と位置づけ

郷の駅ホッときもべつは、国道230号線沿いの喜茂別町市街地入口に位置する複合型休憩施設である。「道の駅」ではないという点が特徴的で、施設内には「道の駅ではありません。スタンプはありません」という案内が各所に掲示されている。しかし実質的な機能は道の駅に準じており、地元特産品の販売所、複数の飲食店舗、直売所を擁する総合施設として地域に根付いている。札幌から中山峠を経由して洞爺湖・ニセコ方面へ向かう際の休憩スポットとして、多くのドライバーに利用されている立地の良さが最大の強みだ。

2020年・2024年のリニューアルと業態進化

当施設は2010年4月28日にオープン後、2020年に大規模リニューアルを実施。さらに2024年7月には直売所「きもべつ市場ORTO」が7月3日に、レストラン「ORTO」が7月10日にリニューアルオープンするなど、継続的な施設改善を行っている。この積極的な投資姿勢により、単なる休憩施設から地域の食文化発信拠点へと進化を遂げつつある。特に注目すべきは、閉店した地元老舗食堂の味を継承するという地域の食文化保存への取り組みであり、これは他の類似施設には見られない独自性として高く評価できる。

喜茂別のソウルフード「チャーメン」の復活

本施設最大の注目ポイントは、喜茂別町のソウルフード「チャーメン」を提供する専門店「チャースタ」の存在だろう。令和4年（2022年）に閉店した喜茂別町の老舗食堂「味の三喜（㐂）」で人気を博していた「チャーメン」の味を引き継ぎ、専門店として営業している。野菜の1日摂取目標量の60%が摂取できるという健康面での配慮も魅力的だ。「チャーメン」は熱々のあんかけ焼きそばスタイルで、帆立・イカ・豚肉に加え、白菜をはじめとする野菜がたっぷり入っている。旨みたっぷりの餡はコクがあり、程よく焼き目がついた麺との相性は抜群。価格は800円〜900円程度とリーズナブルで、レビューでは「フードコートにいる一組に一人はチャーメンを食べている」と評されるほどの人気ぶりを見せている。

複数飲食店舗による多様なメニュー展開

チャースタ以外にも、「HARE」と「レストランORTO/CIERVO」という飲食店舗が館内で営業しており、多様な食の選択肢を提供している。「HARE」では本日のおすすめカレー、もりそば、うどんなどの麺類を中心に、ホットスナックなどの軽食も取り扱う。特に農村カレーは、喜茂別の野菜をふんだんに使用し、具がルーに溶け込んだタイプで野菜の甘みを感じられると好評だ。一方「レストランORTO/CIERVO」では、マジ恋ザンギカレー、十勝豊西牛の肉とろあんかけ、とんかつ定食など、より満足度の高いメニューを展開。複数店舗が入居することで、同行者それぞれが好みのものを選べるという利便性が高く評価されている。

軽食・テイクアウトメニューの充実

ドライブ途中に気軽に食べられる軽食メニューも充実している。特に人気なのが焼きうどんサンドで、細めのうどんに醤油ベースのあっさりした味付けを施し、パリパリサクサクに焼かれたパンで挟んだユニークな一品。からしマヨネーズがアクセントとなり、スナック感覚で楽しめる。2個で500円という価格設定も魅力的で、個別包装されているためテイクアウトにも対応する。その他、布袋のザンギを使用したORTOザンギバーガー、アメリカンドッグ、夏季には北海道産の新鮮なゆできび（とうもろこし）なども人気を集めており、多様なニーズに応える商品ラインナップとなっている。

季節のスイーツと独創的な「けずりフルーツ」

夏季限定で提供される「けずりイチゴ」と「メロンけずり」は、当施設の隠れた人気商品だ。まるごと凍らせた果実をかき氷機で荒削りし、練乳をかけるというシンプルながら贅沢な一品。イチゴの酸味と練乳の甘さ、あるいはメロンの芳醇な香りと甘みを存分に味わえ、暑い日のドライブ休憩に最適。見た目もインスタ映えすると若年層からも支持を得ている。その他、地元の乳製品を使用した数量限定のジェラートも提供しており、季節ごとに異なるフレーバーが楽しめる点も魅力的だ。

直売所の新鮮野菜と特産品

館内の「きもべつ市場ORTO」では、喜茂別町産をはじめとする地元の新鮮野菜を販売している。特産のアスパラガス、馬鈴薯（じゃがいも）をはじめ、季節の旬野菜が豊富に並ぶ。レビューでは「夏場は特に充実しており、これだけでも立ち寄る価値がある」「日曜のお昼過ぎにはほとんどの野菜が売り切れていた」といった声が多く、人気の高さがうかがえる。人参の詰め放題200円といったユニークな企画も実施しており、観光客だけでなく地元客のリピーターも多い。また、地元特産品のきのこ製品や道内土産品も所狭しと並び、お土産選びにも最適な環境が整っている。

施設の快適性と利便性

フードコートエリアは日差しがたっぷり入る明るい空間で、座席数も約40席と十分。券売機での食券購入システムを採用しており、スムーズな注文が可能だ。駐車場は前面に多数完備されており、無料で利用できる。屋外トイレは6時30分から20時までの営業で24時間対応ではないが、日中の利用には問題ない。全席禁煙で清潔な環境が保たれており、お子様連れでも安心して利用できる。ただし、クレジットカードや電子マネーには対応しておらず、現金のみの取り扱いとなっている点は事前に留意が必要だろう。

価格帯とコストパフォーマンス評価

平均予算は〜999円と非常にリーズナブルで、コストパフォーマンスの評価は5点満点中3.5点と高水準を維持している。チャーメンが800円〜900円、カレーが700円〜900円、もりそばが600円〜800円といった価格設定は、ドライブ途中の食事として十分納得できる範囲だろう。特に野菜たっぷりのチャーメンや、地元食材を使用した農村カレーなどは、内容を考えれば「お得」と評価する声が多い。軽食の焼きうどんサンド2個500円、けずりフルーツ600円〜800円なども、この価格帯で満足度の高い商品と言える。

利用シーンと客層分析

主な利用客は、札幌⇔洞爺湖・ニセコ・留寿都方面を移動するドライバーが中心。カップルのドライブデート、家族連れの観光、ライダーのツーリング休憩など、多様なシーンで活用されている。特に週末は家族連れの利用が増え、直売所での野菜購入と食事を組み合わせた利用パターンが多く見られる。また、地元住民による日常的な利用も一定数あり、観光客と地元客が混在する独特の雰囲気を形成している。キャンプ場への移動途中に立ち寄るアウトドア愛好者も多く、テイクアウトメニューの需要も高い。

営業時間と混雑状況

営業時間は平日10:00〜16:00、土日祝10:00〜17:00と、ランチタイムから夕方までの営業。週末の昼時（11:30〜13:30頃）が最も混雑する時間帯で、チャーメンなどの人気メニューは10分程度の待ち時間が発生することもある。直売所の野菜は午前中から昼過ぎにかけて売れ行きが早く、新鮮な野菜を確実に購入したいなら午前中の来店が推奨される。平日は比較的空いており、ゆっくりと食事や買い物を楽しめる環境だ。

改善を望む声と課題

利用者からの改善要望としては、まずキャッシュレス決済への対応が挙げられる。現金のみの取り扱いは、現代の消費行動からすると不便に感じる利用者も少なくない。また、人気商品の品切れ問題も散見され、特に週末午後の直売所野菜の完売は常態化している。生産量の限界はあるものの、予約システムや入荷情報のSNS発信などの工夫余地はあるだろう。トイレの24時間営業化を求める声もあるが、これは「道の駅」ではないという位置づけと関連する構造的課題と言える。

地域貢献と食文化継承の意義

当施設の最も評価すべき点は、単なる商業施設を超えた地域の食文化継承への貢献である。閉店した老舗食堂の味を専門店として復活させたチャースタの取り組みは、地域のアイデンティティ保存という観点から高く評価されるべきだろう。喜茂別町のソウルフードを次世代に伝える役割を担っており、観光資源としての価値も有している。また、地元農産物の販路拡大にも寄与しており、地域経済の活性化にも一定の貢献を果たしている。

総合評価と今後の展望

郷の駅ホッときもべつは、国道230号線沿いのドライブ休憩スポットとして十分な機能を備えた施設であると結論づけられる。チャーメンという地域のソウルフード復活、新鮮な地元野菜の直売、複数飲食店舗による多様なメニュー展開、独創的なけずりフルーツなど、独自性のある魅力を複数有している。コストパフォーマンスも良好で、家族連れからライダーまで幅広い層に支持される理由も理解できる。今後、キャッシュレス決済対応や情報発信の強化といった改善が進めば、さらに利便性が向上し、北海道のドライブルート上における重要な休憩拠点としての地位を確立できるだろう。リニューアルを重ねながら進化を続ける姿勢は高く評価でき、今後の展開にも期待が持てる施設である。