点心の神様直伝の技が光る本格広東料理店

宮の森れんげ堂は、「点心の神様」として知られる欧陽炳堅氏に師事したオーナーシェフ広部賢太郎氏が手掛ける、札幌を代表する本格広東料理店だ。ホテルオークラ札幌の中国料理「桃里」で10年間修行を積んだ後、2007年に独立開業。以来18年にわたり、札幌の食通たちを魅了し続けている。

本場香港の技術と北海道食材の融合

最大の特徴は、本場香港で培った確かな技術と、北海道の豊かな食材を組み合わせた独創的な料理の数々である。小籠包や肉焼売といった伝統的な点心は、「点心の神様」直伝の技術により、皮の薄さと肉汁のバランスが絶妙だ。オホーツク産ホタテや羽幌産甘海老など、地元食材を活かした創作料理も高く評価されており、北海道ならではの味わいを楽しめる点が他店との差別化につながっている。

完全予約制による質の高いサービス

完全予約制を採用することで、一人ひとりの客に対して丁寧なサービスを提供できる環境を整えている。前日までの予約が必要という一見ハードルの高いシステムだが、これにより混雑を避けた快適な食事体験が実現。スタッフの対応も「親切で知識豊富」「提案が的確」と高評価を得ており、初訪問でも安心して利用できる体制が構築されている。

落ち着いた大人の空間

店内はワインレッドとダークブラウンを基調とした、オシャレで落ち着いた雰囲気。カウンター席は広々としており、一人でも気軽に本格中華を楽しめる設計だ。テーブル席も最大20名まで対応可能で、家族での記念日や友人との集まり、ビジネス接待など、様々なシーンで利用できる懐の深さを持つ。個室はないものの、貸切も可能（20名以下）なため、プライベートな食事会にも対応している。

価格とコストパフォーマンス

ランチ3,000円台、ディナー6,000〜7,000円台という価格設定は、本格広東料理店としては標準的な範囲内。しかし提供される料理の質、確かな技術、北海道食材の活用を考慮すると、コストパフォーマンスは非常に高いといえよう。「点心の神様」直伝の技術を、この価格で味わえる機会は貴重だ。ランチタイムの海鮮中華粥セット（1,200円〜）は特にリーズナブルで、女性客を中心に高い人気を博している。

アクセスと立地の特徴

円山公園駅からバスで約10分、またはタクシーで10分程度という立地は、市中心部と比較すると若干不便さがある。しかしこの「隠れ家的」な立地が、かえって特別感を演出し、非日常的な食事体験を提供する要素となっている。駐車場も完備されているため、車での来店も可能だ。宮の森という落ち着いたエリアに位置することで、喧騒から離れてゆったりと食事を楽しめる環境が整っている。

独創的なメニュー構成

メニューは伝統的な点心から、天然エゾシカローストといった創作料理まで幅広く展開。特に自家製アイスは紹興酒味とココナッツミルク味の2種類があり、お持ち帰りも可能という独自性を持つ。デザートまで手を抜かない姿勢が、全体的な満足度の高さにつながっている。

受賞歴が示す実力

2021年と2023年に「中国料理EAST百名店」に選出された実績は、料理の質の高さを客観的に証明するものだ。オーナーシェフが多くのレストランやホテルに点心を卸していることからも、プロの料理人からの信頼の厚さがうかがえる。

改善の余地と今後の展望

完全予約制という特性上、当日思い立って訪問することができない点は、利用シーンを制限する要因となっている。また、個室がない点も、プライバシーを重視する客層には物足りなさを感じさせるかもしれない。しかしこれらの要素は、むしろ店の個性として機能しており、現在の客層には十分に受け入れられているといえる。

最終評価：4.1点（5点満点）

総合的に見ると、宮の森れんげ堂は札幌における本格広東料理の到達点の一つといえる存在だ。確かな技術に裏打ちされた料理の質、北海道食材を活かした独創性、丁寧なサービス、落ち着いた雰囲気という4つの強みを持ち、特別な日の食事にふさわしい価値を提供している。完全予約制や立地の不便さといったハードルはあるものの、それを補って余りある魅力を備えた、札幌を代表する名店といえよう。本格的な広東料理を求める食通はもちろん、記念日や接待など特別なシーンでの利用に最適な、大人のための中華料理店である。