伝統と革新の融合

さいとう製パンは、1953年創業という70年以上の歴史を持ちながら、現在の二代目店主による新しい挑戦が光る、ニセコの隠れた名店だ。昭和30年代から使い続ける古い焼き窯という歴史的価値と、北海道産小麦や羊蹄山の湧き水という地元素材へのこだわりが見事に調和している。

素材へのこだわり

特筆すべきは、二代目店主による素材の全面的な見直しである。輸入小麦からは道産小麦へ、マーガリンは北海道産バターへ、そして水は羊蹄山の湧き水へ。添加物を一切使用しないという姿勢は、現代の健康志向にも合致しており、体に優しいパン作りを実現している。こうした素材へのこだわりが、シンプルながらも深い味わいを生み出している。

看板商品の魅力

人気No.1のメロンパンは、生地感がクッキーとパンの間という絶妙な食感が特徴的。180円というリーズナブルな価格設定も魅力だ。また、注文してから揚げる揚げコッペパンは「見つけたらラッキー」と評されるほどの人気商品となっている。約10種類のドーナツも、昔ながらの優しい味わいで幅広い世代から支持を集めている。

アクセスと営業時間の注意点

ニセコ駅から徒歩約10分という立地は、観光客にもアクセスしやすい。ただし、営業時間は10:00〜16:00と短く、人気商品は午後には売り切れることが多い。特に休日は早い時間の訪問がおすすめだ。駐車場は1台分のみだが、町民センターの駐車場も利用可能という配慮がある。

店舗の雰囲気と接客

古民家をリノベーションした店舗は、白い暖簾とパンの置物が印象的で、レトロながらも清潔感のある佇まい。店内は狭く2〜3人で密になるため、混雑時は外で待つこともあるが、ガラスケース越しに製造風景が見られるのは楽しい体験だ。若い店主の真摯な姿勢と、焼き上がったパンを案内してくれる心配りも好評価のポイント。

総合評価

さいとう製パンは、歴史的価値と現代的な健康志向を両立させた、ニセコの貴重な存在といえる。観光地化が進むニセコにあって、地元に根ざした昔ながらのパン屋として、そして新しい価値観を取り入れた革新的なベーカリーとして、二つの顔を持つ。価格もリーズナブルで、観光客にも地元民にも愛される理由が理解できる。早い時間の訪問は必須だが、その価値は十分にある名店だ。