2022年7月に開業したばかりながら、すでに札幌を代表する寿司店として確固たる地位を築いた「鮨 草平」。食べログ寿司EAST百名店2025に選出されるという快挙は、その実力を如実に物語っている。

最大の魅力は、東京の名店「すし匠」で修行した松倉草平氏の確かな技術と、北海道の豊富な食材、そして国際的な経験から生まれる独創性が三位一体となって織りなす、まさに唯一無二の寿司体験だ。江戸前の伝統を踏襲しながらも、ネタごとに最適な温度管理を徹底するなど、常に進化を続ける姿勢が光る。

前半の一品料理は写真撮影不可というポリシーを採用しているが、これは決して閉鎖的な姿勢ではない。むしろ「お客様に楽しみにしていただきたい」という、料理人としての誠実な配慮の表れであり、実際に訪れた客からは「想像を絶する美味しさ」「写真を撮る暇も惜しい」といった絶賛の声が寄せられている。紫うに入り茶碗蒸しにキャビアと玉蜀黍を添えた創作料理など、季節ごとに変化する一品の数々は、訪れるたびに新しい驚きをもたらしてくれるだろう。

握りについては、夏の風物詩である鰊を丁寧な骨抜きと絶妙な温度管理で提供するなど、一貫一貫に物語がある。積丹産ウニの軍艦、対馬産アナゴなど、全国から厳選した食材を最高の状態で提供する姿勢は、まさにプロフェッショナルの仕事といえよう。

白木のカウンター9席のみという贅沢な空間設計も秀逸だ。檜造りの氷室、網代編みの天井が清々しい和の雰囲気を演出し、落ち着いた大人の時間を約束してくれる。完全予約制で一斉スタート方式を採用しているため、全員が同じペースで料理を楽しめるのも好印象だ。

価格帯は3万円台と決して安くはないが、その価値は十分にある。むしろ、この品質でこの価格は良心的とさえいえるだろう。ドイツビールの提供など、松倉氏のミュンヘン滞在経験から生まれたユニークな要素も、他店との差別化に成功している要因の一つだ。

唯一の懸念は予約の困難さだろう。人気店ゆえに1〜2ヶ月先まで予約が埋まっていることも珍しくなく、キャンセルポリシーも厳格だ。しかし、それを乗り越える価値は確実にある。

伝統と革新、地域性と国際性を見事に融合させた「鮨 草平」は、札幌の寿司シーンに新たな風を吹き込む存在となっている。北海道を訪れる際には、ぜひとも体験していただきたい至高の一軒である。その一貫一貫に込められた職人の想いは、きっとあなたの寿司観を変えることだろう。