隠れた名店としての評価

食酒房「和さび」は、函館市本町の五稜郭公園前駅から徒歩わずか3分という好立地にありながら、知る人ぞ知る隠れた名店として評価を獲得している。訪問客の多くは「何となく入店した」「偶然見つけた」というきっかけでありながら、一度訪れると「忘れられない店」「また行きたい」という強い印象を残しているのが特徴だ。この意外性こそが、同店の大きな魅力となっているのは明らかである。

料理の質と評判

料理に関する評価は極めて高く、特にだし巻き卵は「ヤバい」という表現で形容されるほど。ふわふわの食感と優しい出汁の味わいが、訪問客の記憶に強く残るようだ。またホッケも同様に高評価を得ており、脂がのった新鮮な状態で提供されている点が支持されている。北海道名物であるラーメンサラダも「美味い」と評され、地元の味を確実に提供していることが伺える。

ディナータイムにはより多様な料理が楽しめ、刺身の盛り合わせ、河豚の唐揚げ、子羊の鉄板焼き、ライスコロッケ、じゃがベーコングラタンなど、和食だけでなく創作料理も提供。カウンターには毎日日替わりで煮付け魚や煮物など家庭的な料理が約10種類並び、この多様性が常連客を飽きさせない工夫となっているのだろう。

お酒へのこだわり

日本酒の品揃えと質も高く評価されており、「日本酒美味しい！」という感嘆の声が上がっている。料理との相性を考えて厳選された日本酒が揃えられており、お酒好きにとっても満足度の高い店となっているようだ。

ランチの魅力とコストパフォーマンス

ランチタイムは月・火・木・金のみの営業（不定休あり）で、11:30から14:00まで提供される。メニューは基本的に日替わり定食ととんかつ定食の2種類。日替わり定食の内容は、訪問日によってエビフライ・サバのみそ煮・お刺身など変化に富んでおり、汁物・ご飯・小鉢・ドリンクが付いて900円前後という価格設定は、函館市内においても優れたコストパフォーマンスを実現している。

特に注目すべきは、とんかつ定食に付くさんぺい汁（鮭と野菜の味噌汁）という地元ならではのメニューや、フキ・きんぴらといった季節の小鉢が付いてくる点。ランチとしては十分すぎるボリュームと内容で、「この辺りの呑み屋さんでお昼をやっているところは少ないので助かる」という声が示す通り、地域のニーズにも応えている。

店内の雰囲気と設備

店内は濃いブラウンを基調とした落ち着いた雰囲気で統一されており、「薄暗いライティングでお昼でも夜のテイスト」が楽しめる空間設計となっている。この独特の雰囲気が、居酒屋としての特性を保ちながらも、ランチタイムに女性客（マダム層）を中心に支持される理由となっているようだ。

座席構成はカウンター席6席と個室2〜3室という小規模な造りだが、これがかえって落ち着いた食事を楽しめる環境を生み出している。個室があることで、少人数での会食や接待にも対応可能で、様々なシーンでの利用が想定されているのが分かる。

自家菜園による食材へのこだわり

特筆すべき点として、同店は自家菜園を持っており、季節ごとの旬の野菜を自ら栽培している。この食材へのこだわりが、料理の鮮度と質を支える重要な要素となっている。小鉢に使用される野菜の味わいの良さは、この自家栽培の恩恵を受けているものと考えられ、訪問客が感じる「家庭的な美味しさ」の源泉となっているのだろう。

お通しへの評価

居酒屋において賛否が分かれることの多いお通しだが、当店では「お通しも最高」という評価を得ている。これは、お通しの内容が季節や日によって変わる心遣いと、味のクオリティの高さを物語っている。多くの居酒屋でお通しが形式的なものになりがちな中、同店は最初の一皿から客を満足させる姿勢を貫いているようだ。

アクセスと立地の利便性

市電「五稜郭公園前」駅から徒歩約3分（173m）という立地は、函館市内での移動を考えると非常に便利。電車道路沿いの「Unit Life賃貸」を目印に交差点を入ると左側に店舗が見えてくるという分かりやすい場所にありながら、大通りから一本入った位置にあることで、落ち着いた雰囲気を保っているのが巧妙だ。

バス停からもアクセスが良く、「五稜郭（丸井横）」「五稜郭」バス停から徒歩2分、「中央病院前」から徒歩3分と、複数の交通手段に対応。函館の中心部である五稜郭エリアに位置しているため、観光客にとっても地元客にとっても訪れやすい立地条件を備えているといえる。

支払い方法の多様性

支払い方法は現金・PayPay・クレジットカードに対応しているが、ランチタイムは現金のみという制約がある。ディナータイムでは電子決済にも対応しており、現代的な支払いニーズにも応えている点は評価できる。

改善点と課題

一方で、いくつかの改善点も指摘されている。ランチの日替わり定食について、「ゲソ丼は美味しいけどタレがどんぶりの下ご飯にしっかりシミシミで甘すぎる」という意見や、「ちょっとがっかり」という声も存在する。また、ランチの客層が「マダム層だけ」で「函館のサラリーマンはお金ない」という地域経済の実情を反映した指摘もあり、価格設定や客層の広がりについては今後の課題となるかもしれない。

また、ランチ営業が月・火・木・金のみで不定休もあるという営業体制は、利用したいタイミングで閉まっている可能性があり、訪問計画を立てにくいという面もある。事前の電話確認が推奨される状況だ。

店名の変遷と歴史

同店は以前「酒菜花水季」という店名で営業していた歴史を持つ。店名は変わったものの、料理の質や雰囲気は継承されており、常連客からは長年愛され続けている様子が伺える。この歴史的な背景が、店の味と雰囲気に深みを与えているのかもしれない。

総合評価

食酒房「和さび」は、函館五稜郭エリアにおいて質の高い料理と落ち着いた雰囲気、適正な価格設定のバランスが取れた優良店として評価できる。特にだし巻き卵やホッケといった看板メニューの質の高さ、自家菜園の野菜を使用した料理へのこだわり、日本酒の品揃え、そして何よりも「お通しまで最高」という細部へのこだわりが、訪問客に強い印象を残している。ランチタイムの提供日が限られている点や一部メニューの味付けに関する改善余地はあるものの、総合的には「函館の夜にまた行きたい」「忘れられない店」と評される価値を十分に備えた店といえるだろう。隠れた名店として、今後も地元客と観光客の双方から愛され続けることが期待される。